05 中枢性疲労発生の責任分子としてのTGF-β

中枢性疲労発生の責任分子としてのTGF-β

先の実験から、運動によって疲労させたラット脳脊髄液中には活性型TGF-βの量が増大していること、および精製したTGF-βを動物の脳室内に投与すると自発行動が低下し、疲労様の行動が現れることを示した。後者のTGF-β投与は、用量依存性があることから、TGF-βの作用は確からしいこともわかった。

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そこで、疲労ラットの脳脊髄液中で疲労様行動を引き起こす作用の本体がTGF-βであることを証明するために、抗TGF-β抗体を用いて脳脊髄液からTGF-βを除いたものをマウス脳室内に投与し、TGF-βの効果を確認する実験を行った。

プールした疲労ラットの脳脊髄液を2分し、一方を抗TGF-β抗体で、他方を免疫前のコントロール抗体で処理した。我々が実験に用いた抗TGF-β抗体はIg GでプロテインAと結合するため、ビーズに結合させたプロテインAでTGF-β − 抗体複合体を回収し、脳脊髄液中から(もしTGF-βが存在するなら)TGF-βを除去した。免疫前のIgGで処理した脳脊髄液からは、操作は全く同一になるがTGF-βは除去されない。

このように処理した脳脊髄液をマウスの大槽に投与した。免疫前抗体で処理した脳脊髄液を投与されたマウスは、元々その脳脊髄液で観察されるはずの自発行動量の低下が見られたが、抗TGF-β抗体で処理された脳脊髄液を投与された群では自発行動の低下は起こらなかった。抗原−抗体の結合は非常に特異的であることから、抗TGF-β抗体で処理された脳脊髄液で自発行動低下作用が消失したことはTGF-βが動物の自発行動低下の責任分子であることを示すものと考えられた。

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従来遺伝子発現の調節に関与することが報告されてきたTGF-βには、脳内で作用し動物の行動を変化させる作用があることが初めてわかった。