栄養化学分野 タイトル Last update
2026.1.22
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栄養化学分野の研究
 当研究室では、食行動の制御メカニズムの全容解明をめざし、神経科学・内分泌代謝学・分子生物学・遺伝学など、生命科学のアプローチを幅広く取り入れ、弾力的に取り組んでいます。そのために、以下のようなプロジェクトを進めています。

 
研究テーマ
栄養素ベースの食欲の調節メカニズムの解明
 「なぜ食べる?」を解明するうえで、意識にのぼらない(不随意の、意識下の)制御機序の解明を進めています。「何を食べるか(食選択・食の意思決定)」を調節するしくみに関しては、「どれだけ食べるか(カロリー摂取量の調節)」に比べて未解明な点が多いです。
 そこで、私たちは、体の栄養素ニーズに応じた食行動の調節(恒常的栄養素嗜好性)の制御メカニズムの解明を進めています。私たちは最近、単純糖質への嗜好性の制御メカニズムの一部を、臓器連関の視点から解明しました(Matsui, Sasaki* et al., Nature Communications, 2018; Mori,..., Sasaki*. Am J Physiol Endorininology and Metabolism, 2025)。現在、単純糖質嗜好性を制御する脳内メカニズムの解明を進めています。
 また、脂質やタンパク質に対する食欲の調節メカニズムの解明にも取り組んでいます。その一環として、中鎖脂肪酸トリグリセリドに特異的な食欲が存在し、その食欲の調節に肝臓を中心とした新しい臓器連関システムがあることを見出しています(Maruyama, ..., Sasaki*(責任著者). Am J Physiol Endocrinol Metab , 2024)。同定した臓器連関を担う仕組みの解明を現在進めています。

飲酒欲求の調節メカニズムの解明
 栄養情報に基づいた「飲酒を調節する臓器連関システム」があることを発見し、同システムに作用する機能性成分を同定しました(特願 2021-574140; Matsui*... Sasaki*(共同責任著者), PNAS, 2026)。現在、同システムの機序解明、機能性物質の有用性の検証、および、創薬に向けたより効果的な物質の開発を進めています。
飲酒がもたらす充足感を担う仕組みを解明

食嗜好を制御する神経回路の解明
 私たちは、食嗜好(好き・嫌い)が栄養素非依存性に、かつ可逆的に逆転する薬理モデルを見つけました(Sasaki* et al., American Journal of Physiology, 2015)。既知の積み上げでは説明できないこの現象を活用して、全脳での探索をおこない、食嗜好を制御する神経回路を包括的に解明することを進めています。遺伝子組換えマウス、定位脳手術、ウイルスベクター、組織学、薬理遺伝学などと、行動実験を組み合わせた実験を行っています。

食品香気成分の感知・識別機構に関する研究
 最近、私たちは長鎖脂肪酸や酸化型リン脂質のセンサー分子と考えられているCluster of Differentiation 36 (CD36) 受容体が匂いを感じる部位である嗅上皮に存在していることを明らかにしました。また、試験管内の実験により、特定の食品香気成分 (脂肪族アルデヒド類) がCD36受容体により捕捉・認識されるという証拠も得ています。現在、実験系の改良を行うとともに脂肪族アルデヒド以外にもCD36受容体によって捕捉される食品有香物質があるのかを調べています。

 
研究室で学べるスキル
神経科学:定位脳手術、ウイルスベクターの作成、組織学
内分泌代謝学:ホルモン・臓器連関の概念
分子生物学:DNA, RNA, タンパク実験、細胞培養実験、シグナルの解析
遺伝学:遺伝子組換えマウスの交配・維持と扱い方
 など

栄養化学分野 教授 佐々木努


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